2023年3月30日木曜日

本書の演習を picamera2 (libcamera) で実行する方法

1. はじめに

Raspberry Pi OS 2023-10-10 からはじまったバージョン Bookworm および
Raspberry Pi OS 2021-10-30 からはじまったバージョン Bullseye では
カメラモジュールの利用方法に大きな変更が加えられ、libcamera というライブラリを用いるようになりました。 これは、本書でカメラを用いるプログラムがそのままでは動かなくなる、ということを意味します。

ただし、Bullseye では「Legacy Camera」という、これまでと互換性のあるカメラの利用方法が可能になっています。この Lecgacy Camera を用いれば本書でカメラを用いるプログラムはそのまま動作しますが、 残念ながら Bookworm では Legacy Camera モードは削除されてしまいました。

そこで、本ページでは、Legacy Camera に頼らずに最新の OS で本書の演習を実行する方法を解説します。具体的には、libcamera ライブラリを利用する Python モジュールである picamera2 を使ってプログラムを実行します。

本書のサンプルプログラムは picamera の旧バージョンを使って書かれていました。しかし、picamera2 は picamera とは互換性がありませんので、picamera2 用に書き換えられたプログラムをダウンロードして利用することになります。

2. 準備

サポート環境は Bookworm および Bullseye 以の 32-bit または 64-bit 版の Raspberry Pi OS です。Bullseye の場合は、なるべく新しいバージョンを用いましょう。そうしないと、本ページで利用する picamera2 (python3-picamera2) がインストールされていないことがあるからです。

また、Bullseye の場合、Legacy Camera モードは無効にしておく必要があります。OS インストール直後の状態ではあらかじめ無効になっています。一度有効にしてしまった方は、 ターミナルを開いて以下の手順に従うことで、raspi-config により Legacy Camera モードを無効にしましょう。
  1. 「 sudo raspi-config 」を実行することで raspi-config を起動
  2. キーボードの「↓」キーを2回押し、「Interface Options」を選択してから「Enter」キーを押す
  3. 「I1 Legacy Camera Enable/Disable」があらかじめ選択されているので、「Enter」キーを押す
  4. 「Would you like to enable legacy camera support?」と聞かれるので「→」キーで「いいえ」が選択された状態にし、「Enter」キーを押す
  5. 「Legacy camera support is disabled」と表示されるので、「了解」が選択された状態で「Enter」キーを押す
  6. raspi-configを起動した状態の画面に戻るので、「TAB」キーを二回クリックし、「Finish」を選択した状態で「Enter」キーを押す
  7. 再起動を促されるので、「はい」が選択された状態で「Enter」キーを押す
以上で、Legacy Camera モードが無効になります。

次に、お使いのカメラモジュールのバージョンを把握してください。2023年3月現在、Raspberry Pi のカメラモジュールにはバージョン1から3があり、下図のような外観をしています。
左から、バージョン1(基板が四角)、バージョン2(基板の角が丸く、レンズ周辺が黒)、バージョン3(基板の角が丸く、レンズ周辺が銀)です。基板上にもバージョンの記載がありますね。

後でダウンロードして頂くプログラムでは、このカメラモジュールのバージョンにより設定が変わる箇所があります。

3. ダウンロードと準備

それでは、picamera2 を利用するプログラムをダウンロードしましょう。

ターミナルを開き、本書のサンプルファイル(数字で始まるファイル)が存在するディレクトリに移動してください。 サンプルファイルをホームディレクトリに展開した方は移動の必要はありません。bluebacksディレクトリに展開した方は下記のコマンドを実行するのでした。
cd bluebacks
次に、下記の3つのコマンドを順に実行して、必要なファイルのダウンロードと展開を行ってください。コマンドはコピー&貼り付けで実行することを推奨します。展開後はダウンロードした圧縮ファイルは不要となるので削除しています。
wget https://github.com/neuralassembly/raspi/raw/master/raspi1-picamera2.zip
unzip raspi1-picamera2.zip
rm raspi1-picamera2.zip
なお、展開されるファイルの名前は既存のサンプルファイルとは異なりますので、サンプルファイルが上書きされることはありません。展開により現れるファイルは下記の通りです。Pythonpプログラムにはファイル名末尾に「-picamera2.py」がついていることに注意してください。
05-04-sw-camera-picamera2.py
10-02-stream-libcamera.sh
以下では、これらのファイルの使い方を解説していきます。

4. 実行方法

さて、ダウンロードして展開したファイルの使い方を解説していきます。

p.123 タクトスイッチをカメラのシャッターに (5.6)

5.6章ではタクトスイッチをカメラのシャッターにするため、プログラムでカメラの映像を表示する必要がありました。

そのプログラムの picamera2 版が 05-04-sw-camera-picamera2.py です。このプログラムを実行するには、画像処理用のライブラリである OpenCV をインストールする必要があります。 ターミナルを起動して下記のコマンドを実行すると、OpenCV をインストールできます。
sudo apt update
sudo apt install python3-opencv
プログラムは、下記のコマンドで(または Thonny で)実行します。
python3 05-04-sw-camera-picamera2.py
なお、libcamera.so.0.X.X のバージョンに関するエラーが出た場合、下記のコマンドで libcamera-dev と python3-picamera2 を更新すると良いかもしれません。
sudo apt update
sudo apt install libcamera-dev python3-picamera2


p.289 mjpg-streamer の代替

映像配信用に、mjpg-streamer をインストールして用いますが、これも libcamera に対応したバージョンをインストールする必要があります。

libcamera 対応の mjpg-streamer は ArduCAM さんが公開していますが、これをこのまま用いると、 本書のように低解像度 (640x480) の映像を指定したときに以下の問題が現れます。
  • 映像の画質が非常に悪い (カメラモジュール v.1)
  • 映像の範囲が非常に狭い (カメラモジュール v.2 と 3)
この問題を筆者が独自に修整した版をここでは利用することにします。

まず、これまでダウンロードまたはインストールした mjpg-streamer を削除するため、ターミナルを起動して以下のコマンドを実行しましょう。
sudo rm -rf mjpg-streamer /opt/mjpg-streamer
そして、以下の手順で修整済の libcamera 対応 mjpg-streamer をインストールしましょう。
(1) sudo apt update
(2) sudo apt install libjpeg-dev cmake libcamera-dev
(3) git clone https://github.com/neuralpi/mjpg-streamer.git
(4) cd mjpg-streamer/mjpg-streamer-experimental
(5) make
(6) cd
(7) sudo mv mjpg-streamer/mjpg-streamer-experimental /opt/mjpg-streamer
なお、OS として Bullseye やリリース直後の Bookworm をお使いの方は、上記の (5) で LibCamera.cpp のビルド中にエラーが起こると思います。その場合、エラーが出た状態から以下の 8 コマンドを一つずつ順に実行してください。この 8 コマンドが上記 (5)~(7) の代替、というイメージです。
rm -rf _build
mkdir _build
cd _build
cmake -DLIBCAMERA_USES_TRANSFORM=ON ..
cd ..
make
cd
sudo mv mjpg-streamer/mjpg-streamer-experimental /opt/mjpg-streamer
インストール後は、上で展開して得られたシェルスクリプト 10-02-stream-libcamera.sh を実行することで mjpg-streamer を起動しますが、 実行前に一つ注意があります。 10-02-stream-libcamera.sh をテキストディタで開くと以下のような箇所があります。
  LD_LIBRARY_PATH=/opt/mjpg-streamer/ /opt/mjpg-streamer/mjpg_streamer -i "input_libcamera.so -camver 1 -fps 15 -r 640x480 -s 640x480" -o "output_http.so -p 9000 -w /opt/mjpg-streamer/www" > /dev/null 2>&1&
このうち
-camver 1
の部分が、筆者が修整した部分に関連しており、カメラモジュールのバージョンの数字を指定しています。お使いのカメラモジュールがバージョン 2 か 3 なら、この数字を 2 または 3 に変更し、それからファイルを保存してください。 なお、この数値を 0 にするかあるいは -camver の設定自体を削除すると ArduCAM さんの mjpg-streamer と同じ挙動になります。

保存が済んだら、コマンド
sh 10-02-stream-libcamera.sh
を実行することで mjpg-streamer が起動されます。

以上、お疲れさまでした。

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